2014年11月30日日曜日

槍の穂先にて。

槍ヶ岳。北アルプスのランドマーク。この山脈の風景に鋭くアクセントをつけて山に向かう者たちの気持ちを高揚させてくれる日本の名峰だ。
上高地に降り立つと、大勢の登山客、クライマー、観光客、旅人の賑わい。いつも人の少ない山域を歩く者にとっては全てがあまりに眩しい。
今回は南岳をからめてゆったり歩く贅沢な山旅だ。天候に恵まれ親しい友と歩く明るい山道は
また違った山の楽しさを教えてくれる山旅であった。


氷河公園・天狗池からの光景。青空と雲と槍ヶ岳。ゆったりとランチタイムをたのしんだ。


南岳から大キレットの向こうに北穂高岳から続く主稜線を見る。この日はこの後ガスに覆われた。


槍ヶ岳の日の出。好天に恵まれ小屋の登山客の賑いが聞こえる。今日も良い一日に期待。



黒部源流の山々にも光がさして来た。思い出の山旅を振り返る展望だ。

 
 
槍の穂先からの展望。登った者にしかわからない感動を教えてくれる。文句なしだ。

2014年11月26日水曜日

原始の森ニペソツ山。

ニペソツ山。標高2013m。日本で一番東に位置する2000m峰である。
山名はアイヌ語で「流木がある川」もしくは「シナノ木の皮を剥ぐ川」の意。
この山の魅力は原始性であろう。東大雪山系のくくりではあるが登っている感覚は道東やさらに北方の香りのする山だ。開拓以前の姿を残す原始の森は深く。幾つもの森と岩峰を超え頂きを目指した。風雪にさらされた山頂は鋭く切れ落ちて大雪山系の雄大な眺めと十勝平野へと続く樹海のうねりに圧倒される。
普段なかなかお目にかかれない高山植物たちやナキウサギも間近にその生態を見せてくれる。
日帰りでの山行も可能ではあるが今回はその魅力を天幕で一夜をすごして体感した。
夕暮れと朝焼けの移ろいは太古から続く時の流れを感じるひとときとなり、自然の大きさと我々の小ささを思う山行であった。


ニペソツ山の雄姿。天狗岳から望む。一度下ってさらに急登が待っている。空が近い。


前天狗のテン場。数張のスペース。この日は我々のみの幕営である。数年前はナキウサギが
度々訪れてくれたがこの日は声のみ。登山者の増加の為であろうか。


原始の森から湧く雲。その上のウペペサンケ山が怪しく聳えている。


雲海の向こうから朝日を迎える。クマネシリ山が影を落とし遠く阿寒と知床連山を望む。快晴だ。


前天狗の岩場の向こうにトムラウシ山をはじめ大雪山系の名だたる山々遠望する。大雪山縦走をした者には心に残る光景だ。


山頂とその東面は希少な高山植物の宝庫となっているが、一帯は切れ落ちており転落事故も発生しているようだ。植物保護と転落防止の為にも自制した行動が求められる。写真はフタマタタンポポ。

 
 
展望の稜線の下は樹海の深い森。静かな山域だ。
 
【山行memo】 
※登山口すぐの沢は倒木に頼って渡る。
※小天狗岳の岩場は短いが狭く滑りやすい。ルートを見極めて足元には十分注意。
※途中の水の確保については期待しないほうが良い。
※前天狗にはトイレブースがある。携帯トイレ持参の事。
※山頂一帯と東面は滑落注意。
※距離も標高差もあるルートなので計画には余裕を。
※前天狗付近は濃霧時等の視界不良時は特にルートが不明瞭。
※幌加温泉コースにいては不明(廃道状態と聞く)。
今回は十六ノ沢コース。こちらがメインルート。


ニセイカウシュッペ山に登る。

アイヌの言葉でニセイ・カ・ウシ・ぺ 「崖の上にあるもの」の意。
表大雪とは層雲峡を挟んでその対岸にあり、柱状節理の断崖の上にある山である。
高山植物に恵まれ、比較的登りやすく変化に富んでおり登山の楽しさを満喫出来る北大雪山系の
名山である。前回の平山とは痩せた岩稜、通称アンギラスの背でつながっている。
まずはチシマノキンバイソウの群落が圧巻で誰しも感嘆の声をあげる。
天をつく鋭い岩峰、大槍の周辺はチングルマやハクサンイチゲ、エゾノツガザクラがまとわりつくように咲き乱れその背景には遠く大雪山系が残雪豊かに広がっている様は雄大だ。
高山植物に励まされながら展望の山頂に至る贅沢な山旅なのだ。

 
 
大槍の北東斜面のチングルマとハクサンイチゲ、ツガザクラ類の群落は圧巻だ。
 

 
 
 



 
 
大槍とその背後の表大雪の山々の展望。これから最後の登りにかかる。
 


チシマノキンバイソウ。大雪山系でみられる高茎草本類の代表格。艶やかな黄金色が美しい。

【山行memo】
※この山域は熊の出没が多い。今回もかなり大型のヒグマを目撃しているので注意。
※林道にゲートが設置されているので予めゲートナンバーを確認の事。



勇んで平山へ向かう。

 
北海道、北大雪山系、平山。
高山植物の名山である。その名の通り山頂部はなだらかで平たい。
林道の崩壊によりしばらくの間登山口まで通行出来ず足が遠のいていたけれど、ようやく開通の
知らせが届き、勇んで訪ねてみた。
この山は表大雪(大雪山中央部)に比べると広大な群落にこそ恵まれないが、歩を進めるほどに異なる環境に適応した高山植物を楽しむ事が出来る。特にタカネシオガマの群落は美しく印象的だ。山頂に近づくにつれ平山と対峙するニセイカウシュッペ山とそこへと続く痩せた岩稜、通称アンギラスの背が迫る。
ピークハントというよりは、高山植物をじっくり観察し、北大雪の展望を楽しみながらの稜線漫歩が似合うのが平山だ。
 


 
 岩場に咲くタカネシオガマ。訪れた7月10日は見頃であった。遠くニセイカウシュッペ山を望む。
 
 
 
 おなじみ高山植物の女王コマクサ。少し環境が異なるだけでこれほど種類が異なる。